AIの回答は「いつの情報か」を確認してから使おう——Gemini思考モードで気づいたこと
投資にGemini思考モードを試してみた
Geminiに「思考モード(Deep Think)」という機能があります。通常の回答よりも時間をかけて推論するモードで、複雑な問いに対してより深く考えてから答えを返してくれます。
「これを株式投資の銘柄分析に使えないか」と思い、試してみました。
回答はとても丁寧で、事業構造・競合比較・リスク要因などが整理されていて、一見すると十分な分析に見えました。ところが読み進めるうちに、ふと引っかかることが出てきました。
「この数字、今の情報?」
実際に起きたズレ——AIの分析と市場の現実
Geminiに景気や市場のトレンドについて分析を依頼したとき、「現在の市場は安定している」「景気後退リスクは低い」といった内容が返ってきました。
しかし実際の市場では、その時点でまったく異なることが起きていました。
下のグラフを見てください。S&P500の推移(青線)と、「Recession(景気後退)」というキーワードのGoogle検索ボリューム(赤の点線)を重ねたものです。

2026年1月中旬と2月初旬に「Recession」の検索が急増していることがわかります。これは市場参加者の間で景気後退への不安が高まったタイミングで、実際にS&P500も急落しています。
つまり、AIが「安定している」と分析した時期と、市場参加者が「景気後退」を検索しまくっていた時期が重なっていたのです。
グラフ自体も古いデータだった
ここで気づいたのが、Geminiが生成したこのグラフ自体も2024年頃の情報をベースにしていたという点です。
グラフのタイトルには「2026 Trend」と書かれているものの、S&P500の水準が4,700〜4,950付近で推移しています。しかし実際の2026年初頭のS&P500は5,800〜6,000台で推移しており、数値が大幅にズレていました。
Geminiにこの点を指摘すると、「シミュレーションに使用したS&P500の基準値は2024年末時点のデータをもとにしており、現在の実際の水準とは異なります」と認めました。
つまり「2026年のトレンド」と題したグラフでありながら、その中身は2024年の数字をベースにした古い情報だったのです。AIは学習データのカットオフ時点以降の情報を持っていないため、こうした足元の変化をまったく反映できていませんでした。
なぜこうなるのか——AIの「知識の期限」
AIはあくまで学習データのカットオフ時点までの情報しか持っていません。それ以降に公表された決算情報や、事業環境の変化、市場のセンチメント変化といった動きは、原則として反映されていないのです。
思考モードで「より深く考えてくれている」ように見えても、素材となる情報自体が古ければ、いくら丁寧に推論しても出てくる答えは古いまま。
推論の深さ ≠ 情報の正確さ・新しさ
さらに厄介なのが、AIは断定的な口調で話す点です。情報が2年前のものでも、今日の情報でも、同じ自信たっぷりなトーンで答えます。情報の鮮度と回答の自信度は連動していません。
正直なところ、分析の回答が流暢で自信ありげだったので、「最新の情報を踏まえて答えてくれている」と無意識に思い込んでいました。これは危ない思い込みでした。
投資にAIを使うときに気をつけたいこと
この体験をふまえ、株式投資の判断においてAIを活用する場合に注意したい点をまとめます。
1. カットオフ日を確認する
使っているAIの学習データがいつ時点のものか、事前に確認する習慣をつけましょう。モデルによって異なりますが、数ヶ月〜1年以上前のデータで止まっていることがほとんどです。
2. 数値は必ず一次ソースで確認する
業績数値(売上・利益・EPS等)、財務指標、配当情報などは、AIの回答をそのまま使わず、必ず決算短信・有価証券報告書・IRサイトで確認しましょう。
3. 「最近」「現在」という言葉に要注意
AIが「現在の業績は〜」「最近の動向として〜」と言っても、それはAIにとっての「現在」であり、学習データの時点での話です。実際の現在とは大きく異なる可能性があります。
4. 定性的な分析には有効
一方で、ビジネスモデルの整理、業界構造の解説、比較検討のフレームワーク作成など、時間が経っても大きく変わらない定性的な分析にはAIは有効です。最新の数値は自分で補完する前提で使うと良いでしょう。
まとめ
- AIの回答は学習データのカットオフ時点までの情報しか含まない
- 思考モードでも、素材となる情報が古ければ回答も古い
- 「Recession」検索急増・S&P500急落の局面でも「安定している」と分析した実例あり
- 投資判断に使う数値は必ず一次ソースで確認する
- 定性的な分析・整理にはAIを活用しつつ、数値は自分で補完する
AIはとても便利なツールですが、万能ではありません。特に投資のような情報の鮮度が結果に直結する場面では、AIの回答を出発点にしつつ、最終確認は自分でする——というスタンスが今のところベストだと思っています。